2014年11月16日日曜日

何故欧州プロはディスクを避けるのか?欧州でディスクブレーキが普及しないのは何故か?




先日のエントリも沢山の方にごらん頂きまして、ありがとうございました。
さて、ディスクブレーキの優位性について私の認識は前回の投稿で示した通りですが、海外(特に欧州)の自転車事情を垣間見るにそこまで普及しきっていないと言うのがざっくりな印象。何故なのでしょうか。

そこで、Facebookで、ベルギーにお住まいの山宮正氏(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%AE%AE%E6%AD%A3)から、貴重なヒントを頂戴しましたので以下にてシェアさせて頂きます。(氏はその昔、オランダに遠征に行った際には大変お世話になり、自分の自転車競技観を変えてくれた恩師の一人です。)

以下引用
山宮 正 
ディスクブレーキが性能が良いのは衆知の事実であるにも拘らず、プロのシクロクロスレースではオランダのラルス・ハール、マテュー・ファンデル・プール以外の選手、そして本場ベルギー・オランダで一般アマチュア選手が殆ど使用しないのはなぜなのか?昨年、N・アルベルトは一度使用して、カンチに戻しました。なぜなのか? そういう疑問が日本側から一切聞こえてこないのはなぜなのでしょう?


そこで、以下それに対する当地シクロクロス・プロ選手お抱えのメカニシャンから聞いた話です。
まず「パッドの摩耗が激しく、特に砂場のレース、トレーニングでは、あっと言う間に摩耗し、毎回交換を余儀なくされる。 アマチュアなど自費の選手では、その交換費用だけでも1シーズンに相当な額になるため」。 私が居住している地域は、シクロクロスが盛んなベルギーの中でも特に国際イベントが多く開催される、文句なく世界で一番シクロクロスが盛んな土地です。 現役世界チャンピョンの Z・シュティーバー、T・メウエセン、K・パウエルス、B・アルナウツそしてファンデル・プール兄弟は、我が家から半径数km以内に住んでいます。そして、この地域を始め、シクロクロスの盛んなベルギー西部およびオランダの森林の土壌は砂地が多いのです。つまり、日頃のトレーニングでも砂地を多く走っているのです。


次に問題とされているのは、「オイルがメーカーの説明書に書かれているよりもずっと暖かい温度で凍結し、動かなくなる」そうです。マイナス10度近くで凍結して動かなくなったモデルもある」との事。


以上の理由でシクロクロスの選手は、依然としてカンチ派が多いというのがメカニシャンから聞いた話です。 もちろんプロの場合、機材供給を受けるスポンサーとの関係もあるでしょう。そして、微妙な制動能力には個人的好みも影響していると思います。


ホビーレーサーとして毎週シクロクロスを走っている地元の友人は、昨年ディスクを使っていましたが、パッドの摩耗が極端に早くて、メンテナンス費用がバカにならないという理由で、今年はカンチの自転車に戻しました。
以上、参考までに。


と言った事でした。
よく日本の自転車雑誌とかだと出始めの頃に重量増に目が行っていたようですが、そういうことに限ったワケではないようですね。(PAXのDISCCXはアルミパーツとアルミホイールで頑丈に作っても8kgフラットくらいなので、全然軽いですし。)

オイルが凍る点については、日本だとあまり考えられない状況かもしれませんが、確かにMTBでスノーライドするとレバーの動きが鈍くなることがあるので、冷え込みの厳しい欧州ではありえるトラブルですね。

ブレーキシューについてもMTBで弾丸の用に使用しているので、コスト感覚が欠落していましたがシマノのレジン製のパッドはMTB用でもコンディションが悪いとあっという間に無くなるので、その通りですね。じゃあメタルパッドを採用すればいいのか?とかいう議論になるのかと思いましたので・・・
Vesrahさんのクロスカントリー用のブレーキパッド(しかも軽量バージョンでベースプレートが軽い。)だったらどうなんだってのをテストしてみたいと思います。マキノ、野辺山、全日本選手権のUCIレースで使用してみたいと思います。これで、耐摩耗性も良かったら、日本でディスクブレーキ使わない理由ってあんまし無さそうですね。

ちょっと使ってみた感じは結構良く効くディスクブレーキです。CX用より入りのカッチリ感は強めです。追って、その辺の使用感はアップデートさせていただきます。

2レースしか出てないけど、秩父効果で地味にランキング上位。残りのシーズンも少ない参戦数ですが、なんとか上位を守れるように頑張ります。

チームメートのヨシキと共に応援よろしくお願いします!!

2014年11月14日金曜日

シクロクロスのディスクブレーキは速いのか?


あくまで個人的見解ですが・・・絶対に速いです。

先月C1クラスで優勝させて頂いた秩父CXはコースが難しいことで評判ですが、その際のラップタイムは以下の通り。





途中、石でタイヤカットしてしまい、バイクを交換したんですが、ラップタイムの落ち込みがハンパ無いですね。

PAXCXDISCはSERACのマッドタイヤにディスクブレーキ。
コルナゴはノーマルタイヤにカンチブレーキ。

ならして見ると一周19秒程ラップタイムの差が発生。このタイム差がマッドコンディション下の秩父CXにおける「機材の差」だと思います。周回を重ねる毎にバイクに泥がついたり、ブレーキが利かなくなったりの要因でタイムを失うことはよくあるかと思いますが、ディスクCXに乗ってる間は、機材を気にせずライディングに集中できたのか、学習効果ですこしづつラップタイムが上がってます。これは結構大事なポイント。機材のパフォーマンスがレースを通じて安定。すばらしい。

ディスクの優位性はマッドに限った話ではなくて、先日の幕張CXでもスタート時はディスクで走って、12、3位付近をで最初の数Lapを走りましたが、クリテリウムみたいな展開で途中からロードっぽい乗り味のコルナゴのほうに分があるかな?と思って乗り換えたものの、制動距離が伸びてブレーキングとコーナーでタイムを失ってるのが判ったので、すぐにDiscに乗り換えなおしてしまいました。

ここまでの2レースとちょっとのトレーニングの感覚では、ディスクのほうが扱い易く、慣れ親しんだMTBのイメージの走りに近いので、個人的にはこっちの方が良い。今後もメインはディスクになるかなといった印象。

そもそも乗り物スポーツの大原則として、コンパクトに減速して曲がるってのは基本ですし、二輪スポーツであるならば、ブレーキをきっかけにアクションを起こすと言うのも大事なテクニック化と思うので、制動力の引き出しがあるってのには越したことがないのかなと思います。

こういうことを書くと、ディスク派vsカンチ派の抗争が始まり始まり・・・で「NysやPowelsはカンチだぜ!」みたいな話も出てきては、「じゃあカンチブレーキで、W杯とかプレスティージュみたいなDHセクションをトッププロと同じように下る度胸はあんのか?!」なんて言い争いが始まったり・・・なんて。ちなみに僕はそんな度胸ありません。翌日会社もあるのでディスクにします。

閑話休題・・・カンチで、十分なコースならカンチでいいと思います。軽いし。でも昨シーズンを振り返ると・・・
湘南クロス→開成町は不要だけど、中井はいる。
茨城→あると全然楽。
野辺山→あると後半楽。
富士山→絶対いる。
ミストラル→いらない。
SUGO→絶対いる。

こんな感じでしょうか。これ、去年欲しかったけど、強がってたんだな。きっと。

レース後半、腕というか上半身が固まってきたときにミスしてタイムを失いがちなCX。そこで正確なライン取りに集中できるのは大きなアドバンテージかと。昨年の東北CX@SUGOは下りで下ハンでブレーキを握り締めて、後半には2台ともシューがなくなったのは良い思い出・・・同会場でやる今年の全日本は下り基調なレイアウトらしいので、絶対にいいんだろうな・・・


でもでも、ディスクはストッピングパワーが強すぎる!!とかコントロール性ではカンチが上だなんて意見でもきっとあるでしょう。



そんな方にはお勧めはコチラのVesrahさんのシクロクロス専用のディスクパッド。
(PAXPROJECTチームはVesrahさんからパッドのサポートを頂いてます。)
http://www.vesrah.com/jpn/Bicycle.pdf

シマノの純正パッドはさすがシマノ。レジンでも強烈に止まります。この辺はXTRと同じで本当によく出来てる。対して画像のVesrahのCX用パッドはローターに当たり始めた最初のカッツンと引っかかる幹事が抑えられており、握ってからのコントロール感はFeeling Good。レースでドリフトして急にとまるなんてこともそうそう無いので、シクロクロスで使うスピード域の範囲内にうまく抑えられてる使用感。ディスクで効かないパッドじゃ意味無いんじゃない?と思うかもですが・・・いえいえ、どんなコンディションでも安定的なブレーキのパフォーマンスが期待できるってのがディスクを使う一つのGood Reasonなんじゃないでしょうか。

そんなわけで、いろいろ論争の尽きない、ディスク・カンチ論争・・・細かいことはつべこべ言わず、シクロクロスレジェンドのでんかと佐宗さんと小坂父が使ってて、速いんだから・・・僕みたいな若造が語るまでも無かったのかもしれませんと書いてて思った次第でございます。

僕のプライベートバイクのPAXCXは会場で声を掛けてくれれば乗ってもらってOKなので、お気軽にどうぞ。

2014年11月13日木曜日

シクロクロスの3種の神器?IRCのチューブレスシリーズに関して。

さて今シーズンのCXシーズンはMTB最終戦が10月の終わりだったこともあり、出遅れた感がありますが、秩父C1-優勝、幕張C1-19位とまずまずな滑り出し。これは新たに導入したディスクブレーキとチューブレスタイヤに助けられてる部分が非常に大きいので、ここで語らせてもらおうかななんて思います。今回はタイヤについて。

秩父CXは典型的なジャパニーズ山クロスでコースがすげーテクニカルでC1の参加者もMTBからそのまま来たっていうメンツ。ここではテクニックもさることながら、コースに合わせた機材が重要なワケで、雨が予想されてた事もあり、PAXチームのGMキクちゃんからはIRCさんのSERACCX/MUDと新型チューブレスホイールを直送されて、とりあえずそいつを使ったら、MTBエリートライダーの総決戦とも言えそうな状況の中、調子良く勝ってしまいました。それ以来、自分の中でチューブレスタイヤ熱がメラメラ。翌週の幕張でノーマルSERACと新型のSANDをIRCさんの計らいでテストさせて頂く事と相成りました。

まずTLタイヤは北米ではかなりの市民権を得ているようで、どのクリンチャータイヤならTL化出来るのかなんて言うまとめページもあったりとなかなかの賑わい。そんなモメンタムの中で出てきたCXに於けるIRCの三種の神器。確かにDugastやFMBのタイヤの「フワーっ」とした乗り心地は最高だけど、実は結構実用ギリギリの空気圧だったり、CXメインでない選手には財布的にもギリギリな感じ。そういうトップティア層に対して、IRCのTLはどうなの?と言うトコだと思いますが、個人的に感じた3種の共通項は以下の通り。

・チューブレスだから取扱いが楽。作業時間数分。
・チューブラとそこまで差を感じない路面追従性。MTBer的にはIRCのチューブレスらしい安心感としっとりした乗り味。
・1.6気圧前後でタイヤが潰れる事はあっても、Fatalな空気漏れには至らず。低気圧に頼って粘って欲しいとこで粘る。
・マッド、ドライの両方のレースで激しく走ったけど、リムからビードが外れるなんて事にはならず。
・トップ選手が言うとこのチューブラらしくタイヤを潰して、ブリッとどりゃって曲がるのなら、そういう走りには向いてなさそうだけど、そもそもそんな走り方を国内でやってる(出来る)選手はトップレーサーの数人くらいですし、所謂CX通な店長でもほんの数人なので、それよかラインをキレイにトレースして走るってのが乗り物スポーツの大原則に沿うなら、これくらいがいい塩梅なんじゃね?と言うスイートスポット突いてくる使用感。

で、以下個別銘柄毎の特徴。
SERAC(ノーマル)
・MTBのシラクみたいに軽いと言うかセンターリッジの気持ち良い走行感。これがスタンダードと思って、CXに参入してきた人は多分ものすごく幸せモノ。ザ・スタンダード。

MUD




・圧倒的な泥ハケとグリップ。秩父はコレとディスクブレーキのメリットをフルに使って、難コースを攻めれた。
・今年の全日本のコース@菅生は雨なら絶対にコレ。後輪は逆ローテーションで使おうと思います。
どろどろなドロップオフでも確りコントロール効いてます↓












SAND
・ほぼロードタイヤに砂目パターンなので、圧倒的な加速力。幕張のコースでは必要十分なグリップ&トラクション。
・乗り心地最高なので、グラベルライドにもちょー良さげ。というか、シーズン後にそのまま履いておけば、春からもCX車でロードトレーニング出来ます。(CX車に25Cとかのロードタイヤ履くと、外径が小さくなってフィーリングが急にクイックになっちゃうけど、これなら春・夏でも違和感無く楽しめそう。









と、まぁこんな具合。総じて使い易いし、コースコンディションに合わせたパターンがそれなりに低予算でそろえられるのは、アマチュア選手としては魅力的。機材のことをあまり考えずに、平日は仕事とトレーニングに集中して、週末レース会場に行ったら、思いっきりレースを楽しめる。そんな使い方が出来る点で、個人的にはココは大きなポイント。
幕張ではタイヤが剥がれてトボトボと副都心の歩道橋を歩く姿を数名お見かけしました。せっかく遠征して、タイヤをはがして帰っちゃうのも勿体無いので、とりあえず1セットスニーカー的に持っておいても良いと思うんですよね。

他にもいろんなメーカーのクリンチャータイヤと比較して見ましたが、感覚的にはIRCの三本があったら他いらねんじゃね?と思います。(詳しくは書けないので聞いてください。)

こんだけ書いておきましたが、そうは言ってもチューブラは確かにしなやか。そこではどうやっても勝てません。ただ、タイヤのしなやかさだけで乗り味を語るのはなんだか違うのじゃないかなと思います。
と、言うのもMTB乗りの立場から見てみると車輪全体の柔らかさもバカには出来ません。クロスでもロードのカーボン車輪を使っている方も多いかとは思いますが、ロードレース用にカッチリ走ることを目的に組まれたホイールは乗り心地が縦にも横にも硬いです。その乗り味を緩和させる為か、高級チューブラを入れてるなんていうケースもあるんじゃなかろうでしょうか。その一方でパワーバンドが比較的男子アマに近いW杯の女子レースを見ると意外とトップクラスの選手でもアルミの手組みが多くて、剛性のコントロールを図っている様子が見受けられます。そんな事を総合的に勘案するとPAXPROJECTは同じくらいの重量でカーボンもアルミも用意しており、CXでの使用を意図してキクちゃんが組んでくれますんで、バランスが取れてるんじゃないかと感じる次第。(特に自分の使ってるリムはIRCのチューブレスを使ったときに綺麗に33mmに納まるように職人技的に開発されたらしい逸品。)

その辺の車輪としてのパッケージングに関するノウハウはPAXCYCLEさんとチーム員の皆さんのとこに蓄積があると思いますんで、会場でお気軽に声を掛けていただければと思います。

PAXPROJECTチームはアマチュアがガチで楽しくレースをするためのチームですので、いたづらに高級機材を使うのではなく、コストとベネフィットの天秤でバランスが良い機材の使い方も提案していくお手伝いが出来たらいいなと思います。

>IRC様
今回は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。